下部温泉郷は、1000年以上の湯治場としての歴史をもっています。およそ750年前には、房総(千葉)からの女性信者が、日蓮聖人を訪ね身延山へやってきましたが、下部の湯治場へ来たついでにきました、と聖人に告げたようで、ついでとは何事かと、追い返したという、聖人が友人に宛てた手紙にそのことが残され(日蓮遺文集)ています。

 この時点で下部温泉は湯治場として広く関東一円にその名は広まっていたことが分かります。それなら下部温泉郷(湯治場)の成立時期はいつかとなりますが、温泉街を前提とした湯町の「熊野権現社(熊野神社)」の創建時には、湯治場としての湯町はあったと思えますので、それくらい遡れそうです。仮に1000年前としておきましょう。そんなに狂いはないでしょう。